【2019年課題ヒアリング】阿寒バス株式会社様

​今回のテーマ

道東 × IoTクラウドハッカソン2019 令和元年秋の陣 〜 地域交通を考えよう 〜

ということで、フィールドワークを各自にお願いした関係もあり、事前に釧路地域の交通事業者様へヒアリングをしております。

そちらヒアリング内容を公開します。


ヒアリング協力:阿寒バス株式会社様


■企業概要

阿寒バス株式会社様は釧路・根室・網走管内で定期路線バスや空港連絡バス、観光バスや都市間高速バス事業などを行う事業者様です。

定期路線バスは市街地よりも、阿寒湖・鶴居・弟子屈・中標津・羅臼など郊外を走るものが多く、釧路にお住まいの方だけでなく、観光客の利用も多いという傾向があります。

貸切バスを除いた売上割合はローカルバスが約6割、都市間高速バスが3割ほどです。バス停は1,000ヶ所ほどあります。

■利用者背景

地元の主な利用者様は高齢者と学生です。くしろバス様同様に、今年6月から始まった「おでかけパスポート70」の効果により、ここ数ヶ月は特に高齢者の利用が伸びています。

※おでかけパスポート70:申請によってくしろバスおよび阿寒バスの限られた区間を、1回あたり100円(路線によっては500円)で乗車できるサービス。2019年6月1日からスタート。


主な利用目的は通学、買い物、通院などさまざまです。特に郊外から市街地を訪れる方にとっては、車以外の重要な移動手段となっています。


▼インバウンド需要により一部路線の利用者が増加

最近はインバウンド需要で阿寒線と鶴居線の利用者が増えており、特に中国人観光客が顕著に増加しています。

※参考:阿寒バスの主な路線

中国人観光客の観光ルートは季節ごとにある程度傾向があり、夏はジャパンレールパスを利用して釧路駅から阿寒湖方面等に向かう方が多いそうです。一方、冬は網走で流氷を見てから釧路に来られる方が増えるとのことです。

■主なサービス

▼もくいく(路線バス目的地検索)

 App Store

 Google Play

▼PINA(バスロケーションシステム)

 App Store

 Google Play

上記2つは、どちらもくしろバスと同じシステムを利用しています。PINAに関してはもう少し精度を高めたいという希望をお持ちです。

しかし費用面に加え、道東全体のバス状況がひとつのアプリで分かるようにと、十勝バスさんや北海道拓殖バスさん、くしろバスさんもこのアプリを利用しているので、他のアプリに変えるというのは現実的ではないそうです。

今後は主要なバス停にQRコードを貼り、バスの運行状況を確認できるようにしたいという希望もあるとのこと。加えて、現状日本語版しかないので、外国語版も作りたいと思っているそうですが、どちらもまだ実現には至っていません。


▼GTFS導入

GTFSとは電車やバスといった公共交通機関の停留所および時刻表情報のオープンフォーマット化のことです。Google Mapsや駅すぱあとといった民間サービスなどでの活用を促進できると期待されており、平成29年3月には国土交通省が標準的なバス情報フォーマット(GTFS-JP)を定めるとともに、データ形式の提供も行っています。

拓殖バスなどがすでに取り組んでおり、阿寒バスでも今後積極的に取り組む方向性とのことです。

※参考:北海道拓殖バス オープンデータ - 北海道拓殖バス公式ホームページ

すでに全系統のデータ入力が終わっており、Googleとのチェック作業中に入っているとのこと。うまく行けばハッカソン開催時には確認できるかもしれません。


Japan Bus Online(外国人向けバス予約システム)


▼WAON決済導入

十勝バス、くしろバス、阿寒バスと並び、日本初の取り組みとして導入されたシステムです。

※参考:全国初!路線バスで電子マネー「WAON」の多区間運賃決済を開始|FIG株式会社|Future Innovation Group Inc.

阿寒バスでの利用者は少ないとのことです。

■主な課題と取り組み

▼インバウンド客への対応

阿寒線・鶴居線で増加するインバウンド客(特に中国人観光客)への対応に苦慮しているそうです。主な課題は4つあります。


*1.言語の問題〜 目的地がわからない 〜

主要停留所については、運賃表示器にバス停案内が英語で表記される他、英語アナウンスも流れますが、まれに本来降りるべきバス停に降りられなかったという観光客からの苦情があるそうです。どのバス停を降りれば目的の施設に着くのかが分かりづらいといった点も、原因の一つとなっているとのことでした。


*2.言語と文化の問題〜 降り方がわからない 〜

日本では降車するバス停に着く前にボタンを押すのが常識ですが、外国ではこうした習慣がないため、目的地を通り越してしまうインバウンド客がいらっしゃるそうです。


* 1と2への対策

本社で2〜3台ほど翻訳機を所有していらっしゃいます。ただし、基本的には定期観光バスで主にガイドの方が駅前案内所などで使用されるとのことで、全路線に配備することはできないそうです。


*3.決済システムの問題

空港連絡バスなど一部の路線では、釧路空港案内所等においてQRコードを使って乗車券を購入することが可能となっています。ただし、利用できるのはWeChat Payのみとなっています。

インバウンド客がよく利用する阿寒線など多くの路線でも利用可能とのことですが、対応が追いつかないのが実情とのことです。

決済端末の導入については、物理的には不可能ではないとのこと。実際に阿寒バスでは決済端末を数台所有しているそうです。

しかし、決済のためには読み込みや乗車人数の確認、金額の手入力といった作業が必要です。これらを運転手が行うと停車時間が長引き、運行に支障が出る可能性があります。

特にバスの場合、乗降場所や人数によって金額が変わります。例えばAという停留所で乗車した場合、乗車場所がBかCかによって金額が変わります。逆に降車場所が同じでも、乗車場所が違えば同じように金額が変わるため、限定した系統のみ自動化されているという状況です。


*4.荷物の問題

インバウンド客は荷物が大きく、通路に置くと通れなくなったり降りられなくなったりするという問題が起きています。特に入り口が一つしかないバスの場合は大きな問題となっています。

空港連絡バスの場合はトランクがついていますが、阿寒線や鶴居線などの路線バスにはこうしたスペースのないバスが運行しています。これはバリアフリーの観点からワンステップやノンステップバスを走らせているためです。こうしたバスにはトランクがついていないため、大きな荷物を置くスペースがないそうです。


<実際の写真>

座席の上に大きな荷物をおいている人もいるそうです。主に中国人観光客に多い傾向となっています。